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忘れ物取扱手数料500円

 宿泊施設をチェックアウトしたお客様から、忘れ物をしたという問い合わせは多く入ってくる。「スマホの充電器コードを部屋に忘れたと思う」「白のポーチを洗面台の引き出しに忘れていませんか?」などなど、形状がわかりにくいものから、同じような形をしたものまで忘れ物を特定することは難しい。清掃員が現場で実際の物、色、形、場所などの情報で忘れ物を特定したら、次は、返却方法を相談しないといけない。すぐに取りに来れる人は珍しく、「では、宅配で送っておいて下さい」となるケースがほとんど。送付先の住所をヒアリングし、伝票に記入し、壊れないように忘れ物を梱包し、宅配業者に着払いで依頼する。小さな小物から大きな衣料まで、忘れ物の問い合わせが入れば、この作業を多くの宿泊施設はサービスの一環として無料で行なっている。実に労力がかかる作業なのである。


 日本は忘れ物天国だ。忘れ物が多いという意味での天国ではなく、忘れ物をしてもちゃんと戻ってくるという天国だという意味だ。海外では忘れ物=失った物という認識が強い。ただ、日本のおもてなしは忘れ物=戻ってくる物という構図を可能にしている。そのおもてなしというのも前述した、従業員の誠実さとお客様の為にという気持ちから成り立っている。サービスの一環として、たとえ面倒でも、現場に行って確認したり、間違えがあったらいけないと忘れ物の内容をよく確認したり、壊したらいけないと丁寧に梱包する。受け取ったお客様はさぞかし感謝するだろう。逆に忘れ物がなかった時には、「なぜないんだ。よく探していないじゃないか」とクレームになることすらある。


 個人的に私はこれが良い文化とは思えない。なぜなら、いとも簡単に忘れ物が発生するし、それが返ってきて当然だという考え方が横行しているからだ。海外で大事な忘れ物をしたら、飛んで元の場所に戻ってそれを本人が探すし、大事でなければ「無くなるな」と本人は覚悟しなければならない。逆に忘れ物をしないぞという規律が生まれる。日本は忘れ物天国であるから、忘れても戻ってくるので、そこまで気にしないという文化が根付いてしまっていやしないか?サービスの一環で無料で探してくれて、送ってくれるのは当然でしょと思ってはいやしないかと考えるのである。


 人を動かす以上、そこには労働が発生する。当然労働には対価が必要である。忘れ物をした人と忘れ物をしない人ではサービスの労働時間が違うのである。特に忘れ物を取り扱う労働時間のインパクトは大きい。人手不足な最中、忘れ物対応で手がいっぱいとなってしまう事も現場では起こりかねない。

追加の労働時間が発生する忘れ物については、当然手数料が必要になるという考えがあって良いのではと思うのである。そう、「忘れ物を探していただけますか?」という問い合わせに対して、「忘れ物の確認、送付作業で取扱手数料は500円発生しますが、いかがいたしますか?」という回答があってもいいのではないかという事である。500円かかるならいいやという人もいれば、500円かかっても大事な忘れ物を探してもらいたいという人もいるだろう。500円かかってしまうなら、忘れ物をしないように最初から気をつけようとする人もいるだろう。忘れ物の問い合わせが減れば、現場の業務負担も軽減されるし、必要な場合は手数料が発生するのであれば、モチベーションも上がるだろう。


 忘れ物取扱手数料は聞いたことがないので、おそらく導入されている宿泊施設は皆無だと思うが、ここに宿泊施設への忘れ物取扱手数料の導入を声高に提案させていただきたい。


 

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